七五三と着袴の儀

高倉流衣紋道「七五三と着袴の儀」
ホテル日航会議室内


平成17年7月8日ホテル日航会議室内にて、衣紋道高倉流宗会頭仙石宗久氏をお招き致しまして「高倉流衣紋道 七五三と着袴の儀」の講習会を執り行いました。

「七五三と着袴の儀」
衣紋道高倉流教本 第2回「着袴の儀」

七五三のルーツ

11月15日に祝う「七五三」。3歳と7歳の女の子に5歳の男の子の祝いとして、多くの方に思い出のあることでしょう。しかし、この祝いの起源を知る人はあまり多くないようです。

昔から「七五三の祝」といったのでしょうか。現在の「七五三」のもとになった祝いは。古くは「髪置き(かみおき)」・「深曽木(ふかそぎ)」・「着袴(ちゃっこ)」・「帯解(おびとき)」などと呼ばれていたのです。これらの行事は、とくに平安時代の公家社会で盛んに行なわれていました。

髪置の儀・深曽木の儀

古くは、子どもの髪は、生まれてからしばらくのあいだは剃ることが普通だったようです。末永くじょうぶで美しい髪に恵まれるようにとの願いです。

しかしやがて子どもが数え年の2~3歳になると、髪を伸ばし始めます。これに際して、少し伸びた子どもの髪をきれいに切りそろえる儀式を行いました。

この儀式は「髪置」と呼ばれ、邸内の広間に客を招いて、儀式の後に酒宴を開いたものです。やがてこの子が4~5歳になると、伸びた髪をいま一度切りそろえる儀式を行いました。

これが「深曽木」といわれる儀式で、これももちろん盛大な宴会つきで行なわれたものでした。

着袴の儀

そして子どもが5~6歳になると「着袴」の儀を行なって、初めて袴を着けました。

これは当時男女ともに袴を着けることが服装上の常識だったからで、これ以降は子どもたちも基本的には大人とほぼ同じ形式の服装を身につけることになるわけです。

初めて袴をはくときには、両足を一度に袴に通します。碁盤の上では、青石を両足指に一つずつはさむ習わしでした。この青石は、吉日に吉方を向いて加茂川に赴き、川原で拾ってきたものです。現在ではかわりに黒の碁石を使うことが多くなっています。

中世頃には、「深曽木」と「着袴」は同日に連続して行なわれるようにもなってゆきます。

帯解の儀

「着袴」に臨む子どもたちの小袖などの腰には紐がつけられていて、その紐を軽く結んでいたのですが、7歳ごろになると、その紐を取り去っていよいよ帯を結ぶようになります。このとき行なわれる儀式が「帯解」といわれるものです。

現在との違い

これら一連の儀式は男女児ともに行なわれたもので、もとは性の区別による儀式の違いはありませんでした。ただ、髪を切ったり袴の紐や帯を結んだりしてあげるのが、男の子には父親、女の子には母親の役目だった、というだけです。まさに子は宝、「銀も金も玉も何せむにまされるたから子にしかめやも」と詠んだ山上憶良の歌が思い出されます。また、儀式の行われる日取りも、現代のように決まっていたわけではなく、子どもの誕生日などを中心として、陰陽道の占いで吉日を選んで行なわれていました。

掛け替えのない子どもの健やかな成長を祈る気持ちを大切にするなら、七五三は11月だけでなく、その子の誕生日に祝うというのもまた、本来の行事の意義にかなったあり方だと言えましょう。

現代へのつながり

これら一連の儀式の中で、「着袴」は中世から近世にかけて武家社会や町の人々の中で広く行なわれるようになりましたが、明治以降は服装の西洋化にともなって一般には行なわれなくなり、わずかに皇室にその伝統が守られるのみでした。

そして大戦の後、関東で「七五三」と呼ばれる祝いが一般的になりました(昭和10年頃には今の形があったようです)。ただし、関西でもこの祝いを広く行なうようになったのは最近のことで、京都などでは今でも昔からの「十三参り」を陰暦の3月13日に行なうだけということもあるようです。

宮中の七五三

それでは「着袴の儀」は今はまったくすたれてしまったのでしょうか。

そんなことはありません。天皇家をはじめ各宮家では、民間の七五三にあたる行事として、古式そのままの着袴の儀が祝われています。

親王さま、内親王さまがたは、「半尻」や「細長」という伝統的な装束に身を包まれて、お誕生日に「着袴の儀」をお祝いになるのです。

高倉家に伝わる式次第

高倉家は、平安時代より宮中に伝わる「衣紋道」を守る家です。

衣紋道高倉流は、装束を中心とする有職故実、すなわち宮廷の作法や知識・技術を受け継いできました。それらの一環として、高倉家に代々伝わる古文書には、「着袴の儀」の式次第もことこまかに記されています。

会場風景

高倉流宗会頭の仙石宗久氏にお越し頂いているという事もあり、厳粛な面持ちで講習が始まりました。

着袴の儀〔男の子〕実演

仙石宗久宗会頭解説の元執り行われた川内登久子会頭と江原氏による実演です。

着袴の儀〔女の子〕実演

同じく、仙石宗久宗会頭解説の元執り行われた川内登久子会頭と、中村実千子による実演です。

講習を会を終えて 折田涼子

今回は、衣紋道高倉流宗会頭仙石宗久様に宮中での「着袴の儀」の着装実演と、解説講演を執り行って頂きました。男子5歳の祝い、四方に決まりごと、大人の役割などがあり準備が整い正式な儀式に従い着装が進む…。

碁盤から飛び降りる所は映像で見たことはありましたが、その際に青石を足の間に挟みこんで飛び降りるというのが正式な習わしと知り、又親王さまが伝統的な装束にお身を包まれて、お祝いなされたご様子も今回の講座を通じよくわかりました。

本来なら拝見することの出来ない宮廷作法、知識、技術を目の前で勉強させて頂いた事を嬉しく思います。